2021-03-27
「スポーツ活動における危機管理」というテーマについて、どこにポイントがあるのかということを、それぞれ4名の講師から語っていただきました。
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まず、M講師からは、体育施設の現場の声ということでお話をいただきました。
施設管理における危機管理は、予防が中心である。その中の安全点検、講師は「保守点検」という言葉を使われましたけれども、「安全点検」が重要であるというお話がありました。
これは、法的にいいますと、よく裁判で問題になる、「通常有すべき安全性」という概念です。
裁判の判決を読んでいただきますと、通常有すべき安全性があったかどうか、いうことが必ず問われるわけです。
そのときに必ず、「設置の瑕疵」、つまり設置における欠陥、最初その施設を作ったときの欠陥、それから「保存の瑕疵」、その維持管理にあたっての欠陥、このふたつのポイントから調べられることになります。
そもそも、製造のルールに適合した施設というものを作られたのか、施設は十分ルールに合っている、しかし保存の仕方が悪く、錆の湧くような形まで放置していたのか、ということで、設置の瑕疵と保存の瑕疵というものが常に問題になります。
その際に、「安全配慮義務」ということが、常にスポーツ事故の場合については問題になります。
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日本の場合、スポーツ事故の場合には、故意というものはあまり考えられません。
意図的にビンボールで相手にぶつけるとか、サッカーで故意に相手の足を蹴るとか、そういうことでない限り故意というのはほとんど考えられません。
せいぜいプロ野球の乱闘事件みたいなものです。
いつでも刑事事件になってもおかしくないようなケースなんです。
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要するに、私共が体験するのは「過失」なんです。過失の場合については、常に「予見可能性」と「回避可能性」という二つの概念から押さえていくということが大切です。
いちばん分かりやすいのは、水泳の事故です。人が水の中に入れば溺死する、人は水の中では生きていけない、ということは誰でもわかる。
水泳を指導する者は間違いなくわかる。しかし人というのは、水に入ったからといって、すぐに死ぬわけではない。助け上げて、人工呼吸をし、救命活動を行えば必ず蘇生するわけですから、回避することは可能なんです。ですから水の中に入れても人は死なないと思ったということは、予見可能性に間違いがあった。
そして助ける気もなくて、放置しておいたらよかったというのは、回避可能性に間違いがあったということです。
そういう点から安全配慮義務というのは問われていくんです。
これが、スポーツにおける法律とルールとの関係なのです。
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「骨折まではスポーツ指導者は許されるが、車椅子になれば難しいですよ」ということを話されたと思います。
これはどういうことかと言いますと、実は、原状回復ができるか、どうかという問題なんです。
骨折であれば治療して治ることができる。原状回復が可能なんです。
しかし、目をやられる、あるいは歯をやられるということで、ケガが後遺症を残すということになりますと、原状回復できないわけですから、どうしても訴訟問題というものが発生する、ということをご理解いただければと思います。
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次に、T講師から、運動教育学の立場から、いろいろお話をいただきました。
お話の なかで、相手の気持ちになってスポーツ指導をする、という言葉がありました。
なるほどいい言葉だなと思ったのですが、実はこれが法的な安全配慮義務の問題なのです。
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